なんでも受け身系にしちゃっていませんか?〜正しい受け身の使い時〜
今日の文法
私が長年英会話教師をやってきて必ずと言っていいほど日本人が好んで使いたがる英文法、それは「受け身系」です。
受け身系とは
”Tom was called by his boss”(トムは上司に呼び出された)
のようにBe動詞+動詞+ed(いわゆる過去分詞)+byの形で表現する文章ですが、この表現を使っている大半の人が間違ったタイミングで使っています。
日本語訳が「〜される。/ 〜された」と言う受け身になっているからと言って、英語も単純に受け身にしていいと言うわけではないのです。
英語の受け身系は使っていいタイミングというのが実は決まっています。
それ以外の場面で使うと非常に不自然な表現となり、「なんでわざわざそんな遠回りな言い方する必要があるの…」と聞き手をイライラさせてしまいます。
今日は受け身系の正しい使い時を学びましょう。
英文章の表現は以下の2つがあります。
❷受け身系/受動態(Passive Voice:パッシブボイス)
8割の英語は❶の能動態、つまり動作を起こしている本人=「誰」がどんな動作をしているのかの動詞=「何をした」という文章で表現することができます。
簡単な例としては、
- I got this new coat for my birthday.
-
(私はこの新しいコートを誕生日にもらいました。)
- Sally loves her dog.
-
(サリーは自分の犬が大好きだ。)
のように、私は(誰が)+もらった(何をした)+コートを(何を)
サリーは(誰が)+大好きだ(何をする)+犬を(何を)
と言ったとてもシンプルな英文章です。誰が何をしたのかはっきりわかる文章ですね。
ほとんどのアメリカ人はこのように動作を起こしている本人を主語にし、誰が一体何をしたのか単純明快に表現することを好みます。
しかし日本人はどうしても直球で言いたがらない性質があるので、むやみに受け身にしたりして文章をより複雑にしがちです。
こんな風に…
- This new coat was given to me for my birthday.
-
(この新しいコートは私が誕生日に与えられたものです。)
- The dog is loved by Sally.
-
(その犬はサリーによって愛されている。)
このように受け身系にした文章を日本語訳にしてよく考えてみるとなぜそんな表現をする必要があるのか?と疑問に思いませんか?とても不自然な訳になっていることにお気づきだと思います。
文章を作る時はぜひ誰が行動を起こしているのか、そしてその「行動を起こしている本人」を文章の頭(主語)に持ってくることをまずは心がけてみてください。
それでは❷の受け身系は一体いつ使うのか、説明していきたいと思います。
受け身系/受動態が使える状況は主に3つあります。(これ以外の状況で使うと回りくどい言い方になりますので要注意)
受け身系を使うべき状況3つはこちら。
❷動作を行った本人はわかっているがあえて明らかにしたくない時
❸動作を行っている人が誰なのか皆共通で把握している時・または誰が行ったのかはさほど重要では無い時。
それでは❶の「動作を行った本人がわからない・定かではない時」という状況から具体的にみていきましょう。
例えば…
- 犯罪が起こったが、犯人がまだ誰かわからない時。
- 誰かが内緒で花を植えてくれたが、誰が行ったのかわからない時。
- 教会に寄付金が届いたが、誰が送ったのかわからない時。
このような状況の時は動作を起こしている本人がわからない以上、主語に持ってくることは難しいため、受け身系にして「何が起こったのか」の方に重きを置く措置をとります。
例文を見てみましょう。
- 2 million dollars were stolen from this bank last Friday.
-
(2億円が先週金曜日銀行から盗まれた)
- These beautiful roses were planted anonymously in our school garden.
-
(これらの美しいバラは私たちの学校の庭に内緒で植えられたものです)
- A Huge amount of money was donated to the church on Christmas Day.
-
(大金がクリスマスに教会へ寄付された)
※もちろん、動作を起こした人が誰かわからない状況でもActive Voice(能動態)で文章を作ることは可能です。
しかしその場合、
Someone donated a huge amount of money to the church on Christmas Day.(誰かがクリスマスに大金を教会に寄付した)
となり寄付された事実よりも「誰かしらによって」という部分が強調されることになります。
意図的に、寄付されたことよりも、「誰かが」という部分に重きを置きたい場合のみSomeoneを主語にしてActive Voiceで文章を作ることもしばしばあります。
続いては❷の「動作を行った本人はわかっているがあえて明らかにしたくない時」という状況をみていきましょう。
例えば…
- 学校の窓ガラスがさとる君によって割られたが、生徒の前では彼がやったことを明らか
にしたく無いとき。 - 壊れたコピー機を自分で直しておいたが、「私が直したよ」とはあえて言いたくない
時。
などです。
英語で例文を見てみましょう。
- The classroom window was broken last weekend.
-
(クラスの窓ガラスが先週末割られました。)
- The copy machine is fixed already.
-
(コピー機はもう修理されているよ。)
最後は❸の「動作を行っている人が誰なのか皆共通で把握している時・または誰が行ったのかはさほど重要では無い時。」という状況です。
例えば…
- 金融危機の間に生活支援として1世帯5万円補助された。
- 学校の全てのエアコンが新しいものに取り替えられた。
- 木村容疑者が今朝逮捕された。
これらの状況たちはそれぞれ誰がその動作を行ったのかわざわざ口に出さなくても皆が共通でわかっていることであり、さらにその誰が動作を行ったかはさほど重要では無い内容です。
1つ目の例文は子育て金を補助したのは誰か?それは政府ですね。
2つ目の例文もエアコンを取り替えたのは誰か?それは業者です。
そして最後の例文は木村容疑者を逮捕したは誰か?それは警察です。
これらは皆の暗黙の了解で把握していることですから、いちいち主語に持ってきて言う必要はありません。
なので、以下のように受け身で表現することとなります。
All of the air conditioners were replaced to the new ones.
The suspect, Kimura was arrested this morning.
いかがでしたでしょうか。
この3つの状況はあくまで基本ですので、上にも記したようにどうしても自分の中で強調したいものが明確な場合はこれらのルールに囚われず、一番強調したいものを主語に持ってくるべきだということをお忘れなく。